愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







これで良かったのだと思う。
後々この選択をして良かったと思える日が来る。

両親がいなくなってからずっとひとりだったのだ。
正直ひとりであることには慣れている。


最初こそ辛いかもしれないけれど、また元の生活に戻ればいいだけ。

瀬野と関われたことで、私はもう過去と向き合えることができたのだ。


私はもうひとりで生きていける。
剛毅さんも、そのうち私を切り離すことだろうから。



「…っ、愛佳ちゃん…!」
「えっ…」


放課後。

瀬野を意識しないよう、一切視線を向けずに教室を後にした私。


けれど何故か門前には光希くんと悠真くんの姿があった。


「良かった、愛佳ちゃん…!
行方不明って聞いていたから心配したんだよ!」


多分、きっと何も知らないであろう光希くんが心配そうに私を見つめてきた。

真っ直ぐな視線に、思わず俯いてしまう。


「でも涼ちゃんはどこにいるの?愛佳ちゃんに会えて嬉しかったはずなのに…もしかして、怒ってるのかな。涼ちゃん、最近ずっと怖い雰囲気を纏ってたから」

「もしかして瀬野と話してないのか?」


私がずっと黙っているからだろう、悠真くんが答えやすい質問をしてきた。

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