愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「……ううん、話したよ」
「じゃあ涼ちゃんは今どこに…」


「何してるの?」


光希くんが私に説明を求めたその時。
冷たい声が私たちの間に入ってきて。

私だけでなく光希くんや悠真くんも目を見張って固まってしまう。


最初に反応したのは悠真くんだった。


「……瀬野」

見なくてもわかる、相手が誰かなんて。
冷たい声はきっと私に向けられたものだ。


「りょ、涼ちゃんやっと来た…!愛佳ちゃんがひとりで出てきたからびっくりしたんだよ!」

悠真くんの後に続いた光希くんだったけれど、最初言葉に詰まらせていた。


「ああ、そのこと?
彼女とはもう関わらない方がいいよ」

「えっ…?」


驚いた様子のふたりに対して私は胸が痛くなる。
もう名前すら呼んでくれない。

別れ際もそうだった。



「待って、涼ちゃん…それってどういう」


やめて。
もうそれ以上何も聞かないで。

泣きたくなるから。
自分が惨めに思えて、今すぐ逃げ出したい。

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