愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「───君のような独裁者に一番は任せられない。
何でも自分の思い通りに行くと考えない方がいいよ」
揺らがない声だった。
ハッキリと拒否をして、剛毅さんに対抗心を見せた瀬野。
「まあ、そう簡単に受け入れるわけねぇか。
だが俺は仁蘭を潰してここを占領する。
お前らの負け顔を拝むのが楽しみだ」
剛毅さんは馬鹿にしたように笑い、近くに停めた車へと移動しようとしたけれど。
「愛佳ちゃん!」
光希くんが私を呼び止めた。
思わず足を止めてしまう。
「愛佳ちゃん、嘘だよね…?
どうして突然敵の元へ行くの?」
耳を塞ぎたくなるのを我慢して、振り返らずに再び足を動かした。
「少し前まで涼ちゃんのためにって、あんなに必死だったんだよ!?それなのに突然こうなるだなんて、こんなの愛佳ちゃんの意思じゃ…」
「光希、彼女のことはもう放っておいていいよ。
自分で選んだ道だから、何も言わないであげて」
まだ叫ぶ光希くんを瀬野が止めた。
同時に、もうこれで本当に終わりなのだと思い知らされる。
後戻りはできないと私は、剛毅さんの隣を歩く他なかった。