愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
周りに聞かれても、笑って誤魔化すだけ。
私に気を遣ってくれているのだろうか。
こんなにも最低な私を。
もっと貶せばいいものの。
「でも瀬野は何も言ってないよ?本当に事実なら、少しぐらい周りに不満を漏らすと思うけどな」
「瀬野くんが優しいからだよ、きっと。
だから沙彩も私と一緒にいない方がいい」
「え、嫌だよ。例え愛佳が軽い女だったとしても、私と友達なのにかわりないじゃん」
警告のつもりが、逆に拒否されてしまう。
こんな私をまだ友達と言ってくれるの?
「……沙彩」
「それに私は愛佳の反応からして何か事情があると見た!全然元気だってないし、ちゃんと寝てる?顔色も悪いよ」
「そう、かな…」
「私の勘は鋭いからね、舐めるんじゃないよ」
力強く頷く沙彩に思わず泣きそうになる。
確かにここ数日間、ほとんど眠れていない。
食べ物もうまく喉を通ってくれず、気分が悪い日が続いている。
けれど、沙彩の言葉でスッと心が楽になった気がした。
同時に上辺だけの付き合いで沙彩と接していた自分を酷く恨みたくなる。