愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「そういえば次、移動だよね。
そろそろ行こっか」
「……うん」
移動の時が一番注目の的だというのに、それでも沙彩は私のそばにいてくれて。
本当に救われた。
けれど───
「見て、あんな堂々と…」
「……二股だって」
周りからの視線は何とも痛く、居心地の悪いものだった。
思わず逃げ出したくなるほど。
いつまでこの状況が続くのだろう。
終わりの見えない今の状況に、目が眩みそうだ。
けれど負の連鎖は続くもので。
「愛佳、教室戻ろう!」
移動教室での授業を終え、沙彩に呼ばれて立ち上がったその時───
「……っ!?」
突然視界が歪んだ。
それも気持ち悪くなるほどに。
頭に痛みも走り、立っていられなくなる。
「愛佳…?」
「……うっ」
「愛佳!愛佳大丈夫!?」
「……っ」
そのまま倒れてしまった私は頭を打った衝撃で、一瞬頭が真っ白になった。
同時に全身が打ち付けられて痛みが走る。