愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜






その日をきっかけに、瀬野との関係が変わったわけでもなかった。

別れた噂が広まったことにより、瀬野と関わろうとする女子が増えた気がする。


瀬野は優しい笑顔を浮かべてそれを受け入れ、楽しそうに話していた。



それが辛いと思う自分もいたけれど、ここで折れるわけにはいかない。


『でも、これだけは言わせて。
俺は弱っていく川上さんを放ってはおけないから』


それでも思い出してしまうのは、この間の保健室での言葉だった。

瀬野に弱っている私を放っておけないと言われてから、せめて表面上だけでも強く在ろうと思った。


両親を亡くしてしまった時の自分に逆戻りしただけ。

単なる強がりに過ぎないけれど。
そうでもしないと、瀬野に弱さを見せてしまいそうなのだ。



「今日は煌凰の集会に参加するから」


放課後、いつものように剛毅さんが迎えに来てくれ、車に乗り込むなりそう言われた。

つまり私もついて来いということだ。



「突然だね。何か緊急?」
「まあな。ようやく仁蘭が動きを見せた」

「…え」


どきりとした。

仁蘭が動きを見せたということは、瀬野が仕掛けたのも同然で。

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