愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



徐々に衝突の日が近づいている。


「この闘いさえ終われば、お前も楽になる。
余計な心配をしなくて済むからな」


剛毅さんは知っている。
私が今もまだ瀬野を引きずっていることに。


「……闘いってことは、平穏に終われないの?」

「ああ、向こうがそれを拒否してるからな。
無理して話し合いで終わらせる必要もない」

「喧嘩、するの?」
「最小限に抑えたいとは思ってる」


ズルイ言い方。
思っているだけで、実際は大きな喧嘩になるかもしれないのだ。


「……そう」
「だから今から作戦会議しにいくんだ」

「作戦…?」
「ああ。喧嘩を最小限に抑えるための作戦だな」


自信に満ち溢れたその笑みに、嫌な予感を抱いた。
本当に剛毅さんは最小限に抑えるつもりがあるのだろうか。

もしそうだとしても、良からぬことを考えていそうだ。


不安を抱きつつも、私がその話に参入する資格はない。

大人しく剛毅さんの側にいればいいだけ。
それ以上口を開くことはなく、ただ目的地に着くのを待つ。

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