愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
私たちが着く頃にはもうほとんどの人たちが集まっていたようで。
みんなが剛毅さんに挨拶をして頭を下げる。
仁蘭よりもずっと多い数に、何度来ても慣れずに圧倒される。
「今日、お前らを集めたのは他でもない、仁蘭との闘いに向けての話をするためだ」
ドスの効いた声が響き、多くの人たちが息を呑んだ。
緊張しているのだろう。
剛毅さんは一言、そう言い放ったところでソファに腰を下ろし、私も隣に来るよう促してきた。
もちろん大人しく座る。
すると剛毅さんは躊躇うことなく私の肩に手をまわしてきた。
彼に触れられることはもう慣れた。
慣れたけれど、特別な感情などは一切抱かない。
「剛毅さん、それで仁蘭の動きというのは…?」
幹部のひとりが口を開いた。
十分偉い立場であるはずなのに、剛毅さんに敬語を使ってどこか怯えているようにも見えなくない。