愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「まあそう焦るな。
そろそろ来る頃だろう」


剛毅さんは余裕たっぷりの笑みを浮かべた。
そろそろ来るとは、一体どういうことだろうか。

何一つわからないでいると───


「剛毅さん、連れてきました」


入り口近くで男の声が聞こえてきた。
全員がそこに視線を向けると、雷霆の総長が立っていて。

その後ろには人影が見えた。
連れてきたとは一体誰───


「……っ!?」


雷霆の総長の後ろにいる人物を確認した時。
私は思わず目を見張った。

言葉すら出ないほどの驚きだった。



どうして…どうして彼女がここにいるの?



「り、莉乃ちゃん…?」



その相手とは、瀬野と兄妹関係にある莉乃ちゃんだった。

その表情に怯えた様子はなく脅されて連れて来られたようには思えない。



「莉乃、お前を待っていたぞ」


私の驚きをよそに、剛毅さんは笑みを浮かべて莉乃ちゃんを出迎える。

彼女は私を一切見ずに剛毅さんへと近づいた。

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