愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



仁蘭を潰して…?
あれほど瀬野を頼っていながら、ここにきてどうして裏切るような行為に走ったの?


わからない。
莉乃ちゃんの考えていることが。


だんだんと遠ざかっていく彼女を見ると我慢できず、思わず立ち上がってしまう。


「……愛佳?」
「ちょっとごめん、すぐ戻る」


剛毅さんに不思議がられたけれど、急いで彼女の後を追った。

途中、手下に止められたけれど、『大丈夫だ』という剛毅さんの言葉のおかげで彼女の元に行くことができた。



「…っ、莉乃ちゃん!」


彼女の後ろ姿が見えると、ようやくその名前を呼ぶ。

意外にも彼女はすぐに立ち止まってくれた。


「莉乃に何か用?」

私を睨んだ彼女の目には、憎しみが込められているような気がした。


「何かって…どうして剛毅さんに話したの?
瀬野は何も知らないんだよね?」

「何、莉乃だけを裏切り者扱いして。あんたも涼介を捨てて、煌凰の総長を選んだくせに」

「…っ」

「お互い、裏切り者同士だね。あんたさえ居なければ、莉乃も裏切ろうとは思わなかったけど」

「え…」


莉乃ちゃんはゆっくりと私に近づいてきた。
かと思えば、突然乾いた音が耳に届く。

視界が移り変わり、頬に痛みが走って。
どうやら私は彼女に平手打ちされたようで、頬がじんじんと痛かった。

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