愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
私はいったいどうすれば───
『俺は大事な仲間を置いて、自分だけ幸せになろうなんてことはしたくない。逃げる選択なんて取らないよ』
瀬野は、はっきりとそう言った。
その言葉に迷いはなかった。
瀬野は諦めていない。
仁蘭のみんなだってそうだ。
だったら私は───
迷わず足が動く。
瀬野にこのことを知らせるんだって。
逃げ出すなら今だ、これをチャンスに捉えて。
やっぱり私は瀬野が、仁蘭がやられていくのをただ見ているだけなんて嫌だ。
だからせめてこのことを───
「川上愛佳、どこに行く?」
そのように決心した直後。
誰かが私の名前を呼んだ。
声質的に剛毅さんではなかった。
振り返ると、そこには雷霆の総長がいて。
「別に、あんたに言う必要ない」
このままだと捕まってしまう。
危機感を抱いた私は走って逃げようとしたけれど。
「お前ら、こいつを通すな!」
恐らく雷霆の手下だったであろう男ふたりが私の前に立ち塞がっていて。
どうやら先回りされていたようだった。