愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「ねぇお願い、通して」
「ダメだ。お前はきっと瀬野の元に行くつもりだろう」
「…っ」
「そもそも裏切ったお前の言葉を信じると思うか?」
彼の言う通りだ。
私は瀬野を裏切るような行為をした。
けれど何も伝えないよりかは良い。
やっぱり私は黙っていられない。
瀬野たちを危険な目に遭わせたくないのだ。
「もう仁蘭は終わりだ、諦めろ。
3日後にすべてが終わる」
「嫌だ、お願い離して!
このままだと仁蘭のみんなが…っ」
次の瞬間。
何とも言えない痛みが走り、目の前が真っ暗になった。
気づけば地面に倒れ込んでいて、意識が朦朧とする。
「悪いな、ここでお前を行かせるわけにはいかねぇ。
大人しくしてもらう」
ああ、ダメだ本当。
こんなのダサすぎる。
自分で選択したことに今更抗うからこうなるのだ。
あまりにも自分がバカすぎて、笑えてくる。
もうずっと、心は彼で占めているのに───
目頭が熱くなり、目から涙が零れ落ちたところで私の意識は途絶えてしまった。