愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「もう遅いんだよ、何もかも。お前が俺の元に来た時点で裏切り者になったんだ。仁蘭に戻ることは許されない」
「こんな醜いやり方、恥ずかしくないの?」
「向こうも奇襲なんて良くないと思わねぇか?
正々堂々と闘いを挑めば良いものの」
「あんたのことだから、どうせまたズルいやり方を考えるんでしょう?」
勝つためなら手段を選ばない。
剛毅さんはそのような人だ。
「これも一種の作戦に過ぎないだろ?何をそう俺だけを責める?瀬野がやられるのが嫌なんだろ」
「…っ、いや!」
それは初めて見せた拒絶だった。
剛毅さんの顔が近づけられたため、咄嗟に顔を背けたのだ。
「何を嫌がる?これでようやく瀬野がこの世界を去るんだ、本当に好きなら喜ぶべきだろう?」
私も最近までそれを願っていた。
けれど瀬野は言ったんだ、仲間を置いてはいけないと。
心に決めていた様子だった。