愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
愛ニ溺レル
大きな闘いが終わった後、剛毅さんは行方不明になった。
恐らく下につくのは嫌だったのだろう、どこかへ行ってしまったのだ。
そのため煌凰の副総長が総長となり、統一に同意した。
そして一度なくなった雷霆も復活し、【仁蘭】の瀬野をトップとして、【雷霆】と【煌凰】も合わせた3チームを統一することに成功した。
これには風雅さんも驚き、『本当にやりやがった』と嬉しそうだった。
3チームが統一したことで、平和が訪れた。
荒れていた裏の世界を立て直そうという話にまで発展し、道端で喧嘩をしているような不良に、どこのチームも声をかけて仲間になるよう手を差し伸べているようだ。
孤独ではない仲間が待つ場所への勧誘。
そのため治安が悪いと言われている街が、徐々に変わってきているらしい。
瀬野はまだまだと言うけれど、この統一がきっかけで明らかに何かが変わろうとしていた。
そして煌凰に情報提供をした莉乃ちゃんだが、瀬野は初めからそうなることを見越していたようだ。
そのため突き放すようなことをせず、彼は莉乃ちゃんを許していた。
本当に瀬野という男は恐ろしい。
何でも知っているのだから。
ようやく平和な日々が訪れて早1ヶ月。
その日は高校2年を終わりに迎える終業式だった。
私はいつもの通り瀬野より早く目覚め、朝ご飯の準備を始める。
「……よし」
朝起きた時、隣に瀬野がいるといつも安心する。
1ヶ月経った今でもその気持ちは消えていない。
長い髪を後ろで束ね、準備を済ませたところで朝ご飯の調理に取り掛かった。
今日は終業式のため、学校は午前中に終わる。
午後からは瀬野と出かけることになっていた。
まずは瀬野の母親のところへ行き、その後に私の両親が眠るお墓に行く予定だ。
瀬野の母親は手術が成功し、あとは経過を見て今後のことを決めるようだ。
正直、統一直後の頃は本当にバタバタしていて中々時間を作れなかったけれど。
1ヶ月経った今、ようやく毎日が落ち着いてきた。
平穏な毎日がここ最近になって戻ってきた気がする。