愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
明日からは春休み。
また瀬野との時間が増えるから嬉しい、かもしれない。
頬が緩みそうになるのを堪え、朝ご飯の準備を始めた。
まずはオムレツを作る。
今日は買い物にも行くため、残っている食材はなるべく使い切ってしまいたい。
卵の何個か余っていて、野菜やベーコンなどもあったため、オムレツに決めた。
あとは食パンでも焼こうと思い、トースターを用意する。
「……川上さん」
「あっ、瀬野。まだ寝ていて良いのに」
「俺も手伝う。おはよう」
「本当?ありがとう」
瀬野も手伝ってくれるようで、お皿の準備などを頼んだ。
あとはコンソメスープを作って完成だ。
副菜がない分、オムレツとスープに野菜をたくさん使ったつもり。
「いつも川上さんの作る料理は美味しいから、嬉しいなぁ」
「何よ急に。別にあんたのも嫌いじゃないよ」
そんな褒めたところで何もしないというのに。
それに瀬野の料理も美味しくて好きだ。
ここ数ヶ月の料理で瀬野は昔の感覚を思い出したようで、今では手際良く料理をする彼に任せることも増えてきた。
「本当?それも嬉しい」
瀬野は私の言葉に対して嬉しそうに笑う。
そしてふたり、テーブルを挟んで朝ご飯を食べ始めるのだ。
その何気ない瞬間が幸せで。
この時間を大切にしたいと思った。
「今日で2年が終わるね。
高校3年は一緒のクラスになれるかなぁ」
「さあ、どうだろうね」
ご飯を食べ終わり、互いが準備を進めて制服も着替え終えた頃。
瀬野が何気なくそう呟いた。
確かにこの1年…というより、後半が特に濃かった。