愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
フシギな夜



何とも言い難い沈黙がふたりの間に流れていた。
暗い道を歩く中、隣にいる瀬野に視線を向ける。

私が了承したことにより、彼が泊まることになった。


彼は電車通学のため、自転車を置いて私も電車で帰ることにした。


『歩くから大丈夫だよ』


なんて最初は自転車の私を気遣ってか、電車に乗ることを拒否された。

けれど歩くとなれば20分か、それ以上かかってしまう恐れもあるため最後は押し切る形になった。



そして電車に30分ほど揺られていると、家の最寄駅に着く。

そこから家までは歩いて10分ほどなのだが、電車に乗っている時から互いに無言だった。


このままいけば家に着いてからも気まずい空気が流れるのではないか。

そう思った私は今のうちにあえて沈黙を破ることにした。


「瀬野くんって身長高いんだね」

最初は形式的な会話から。
徐々に打ち解けていけばいいと。


「高い方…になるのかな」

彼は苦笑いを浮かべる。
よく言われるのか、反応に困っている様子。


恐らく高い部類に入るだろう。
見た感じから170後半はあるはずだ。

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