愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「川上さんはゆっくり奪った方が染め甲斐があるかもしれないね」
「何言っ…んっ」
また唇を塞がれる。
私の言葉は全部キスで封じ込める気なのだろうか。
まるで唇の形を確かめるようなキスに抗えない。
どんどん呑まれていくのがわかる。
またのぼせたような感覚に陥り、少しだけ思考回路が鈍くなった気がした。
「その反応、たまんないね。
頬真っ赤にして、目はトロンとしてる」
「……っ」
「もしかしてハマってくれた?
だとしたら嬉しいなぁ」
「そ、そんなわけないから…!」
ハッと我に返り、慌てて瀬野から離れてベッドから降りる。
危ない、あのまま流されてしまうところだった。
「これからが楽しみだね、川上さん」
そんな私の反応を見て、楽しそうに笑う瀬野は本物の悪魔に思えた。
「もう君は俺に逆らえないんだよ」
弱味を握られてしまった以上、私は瀬野の手のひらで転がされることだろう。
思わず気が遠くなるような出来事に、私は中々信じられないでいた。