愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
迷いノチ誘い
頭に重みを感じる。
決して嫌ではなく、むしろ温かい。
誰かに頭を撫でられるような、そんな感じ。
「……ん」
それを確かめるようにして、ゆっくり目を開ける。
常夜灯しかついていない部屋は薄暗かった。
いつもと違う天井に、一瞬ここがどこかわからなくなる。
柔らかな感触が背中に伝わり、ベッドの上であることを理解したのも束の間。
「あ、起きた?」
「……っ!?」
ベッドに腰を下ろしてこちらを見ている人影に気づき、完全に目が覚めた。
「な、んで…」
慌てて起き上がる。
そこには上着を脱いだ瀬野がいたから。
ようやく状況を理解する。
知らない男に連れて行かれそうになったところを瀬野に助けられ、ホテルに連れてこられたのだ。