愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「でも瀬野くん、ついさっきまで学校にいたんだよね?」

「そうなる、のかな…」


曖昧な返答。
ここに来て瀬野のことがわからなくなるけれど。


「じゃあご飯食べてないでしょ?気を遣わなくていいからね!丁度昨日に買い物行ったばかりだから食材も揃ってるし」

「川上さんが作るの?」
「うん、そうだよ。実は私、一人暮らししてるんだ」


ここでさらっと言ってしまえば後々楽だ。
深く追求されずに済むかもしれない。


「高校生なのに…?」

「もう高校生なんだよ?
一人の方が自由に時間も使えるし、案外楽しいかな」


笑顔を崩さずに。

言葉を詰まらせることなく話せるのも、私の特技かもしれないなんて思いながら。

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