愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
そしてあっという間に当日がやってきた。
学校が終わるなり、まずはクラスの女子で近くのショッピングモールでプリクラを撮り、それから予約している店の場所に向かう。
「なんか瀬野と愛佳、いい感じだと思ったんだけど最近は全然話してないね」
「それ私も思った。
推しカプ誕生だと思ったのに…」
私は主に沙彩と春美と真弥の4人で移動していたけれど、その間に瀬野との関係を問われてしまう。
が、沙彩と春美の言った通り、あの日以来瀬野と話す機会はほとんどなかった。
きっと瀬野は私に興味などなかったのだろう。
女を堕とすため、あんな風に好意を抱いたようなフリをするのが得意なのだ。
私たちの関係はすでに終わり。
私が言いふらさない限り、瀬野は私に関わらないだろうと。
それなら答えはひとつ。
私は誰にも瀬野の秘密を口にしないことだ。
「いい感じなんて、全然そんなことないよ。瀬野くんなら絶対にもっとふさわしい人がいるだろうし」
「絶対に愛佳ちゃんは涼介くんとふさわしいよ…!
涼介くんのこと、気になったりしないの?」
真弥までそんなこと言って。
誰も瀬野の裏を知らないから、そんなこと言えるのだ。
「うーん、好きな人とかって私にはまだ難しいかなぁ…」
今のところ彼氏が欲しいとも思わない。
恋なんてどうでもいいって思ってしまう派だ。
「本当に愛佳ってピュアだよね」
「普通の人間だよ、私なんて」
いや、普通以上にクズな人間かもしれない。
ピュアなんてそんな言葉、私に不相応である。
本当は笑うのも疲れるし、楽しそうにするのも面倒だ。