彼女と私の見分けかた
それはほんの一瞬の出来事だった。

コートの外に見つけてしまった大好きな人の姿。

「藤咲っ!!」

目がそれた私を呼ぶキャプテンの声にはっとしたのとボールが顔面にあたったのと、他の選手と接触して弾き飛ばされたのはほぼ同時で。

移動式得点板に頭をぶつけて床に叩きつけられた衝撃と痛みはすぐに起き上がることができずざわつく体育館にはっきりとその声は私の耳に届いた。

「菜月ちゃん!!!」

試合、見に来てくれてたんだ、服部くん…。

そんなことをぼんやり考えた私は立ち上がることも目を開けることもできず、だんだんとざわついていた人の声が遠くに聞こえ暗い闇に落ちていった。
< 109 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop