彼女と私の見分けかた

げんなりしている俺に

「みんなさ、まさか昨日から付き合い始めたなんて知らないんだよ。」
と隣の席で藤咲が笑った。

「女の子に興味ないと思ってた服部くんに、実は彼女がいたから、他校生の彼女より身近な自分のほうが有利だって。
彼女になれる、奪えるってね、みんな考えてるわけ」

「なんだよそれ。
俺はそんな浮気もんじゃないぞ。身近にいようがいまいが菜月ちゃんがいいんだよ」

「あーはいはい、ご馳走サマ。
お兄ちゃん」

「っ！！」

藤咲の言葉に顔が火照る。

そっか…。

こいつ、菜月ちゃんと結婚したら妹になる…のか！？
思わず顔をしかめた時

"ヴヴ…"

制服のポケットで携帯が震える。藤咲の携帯も同時に震え

「菜月からだ！」

と藤咲が発した言葉とに、急いで手にした携帯には、うん、俺にも菜月ちゃんからメッセージが届いていた。

『退院して今帰宅しました』

携帯を見つめて頬が緩む俺を、ニヤニヤ笑いながら見ていた藤咲と目が合い、

「電話したら？喜ぶよ菜月」

立ち上がった俺に手をひらひらさせた藤咲は、そのまま叶の方に身体の向きを変えて、柔らかな笑顔を向けて叶と話し始めた。

俺は、そんな二人を横目で見ながら、携帯を握りしめて廊下にでると、大きく深呼吸して通話ボタンを押した。