彼女と私の見分けかた
コール音が鳴るとすぐに

「はいっ!はっ服部くん!?」

菜月ちゃんの少し慌てた元気な声が耳に飛び込んできて、俺の頬がさらに緩む。

「菜月ちゃん、電話、今大丈夫?」

「うん、大丈夫。服部くんは?
今は休み時間なの?」

ざわつく廊下の人の声で菜月ちゃんの声が聞き取りづらくて、ひとけのない屋上へ続く階段を登り階段の途中で座り込んだ。

「名前…」

「えっ?」

「昨日の夜は名前で呼んでくれてたのに、直接は言ってくれないんだ」

「……」

数秒の沈黙。
いったい今どんな顔をしているんだろう。

真っ赤な顔をして口をパクパクさせてるんだろうか。
会いたいな…。今すぐ会って腕の中に閉じ込めたい。

「休み時間終わっちゃうよ。
呼んでほしいな。名前、言って?菜月。」

「あ…うっ…しょう…へ…い…くん…」

消え入るような小さな声。
でもしっかり俺の耳に届いた。
嬉しいや。
あぁ、我慢できないや。

「会いたい!
あーーっ!!くっそーっ、今すぐ会いたいなぁ。」

「うん、私も会いたい」

可愛い返事に、どうやって早退しようかそんな考えが脳内をぐるぐるする。

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