彼女と私の見分けかた
「藤咲…」

頭の上から聞こえてくる叶くんの声は微かに震えていて、それは私を包みこんだ腕からもその震えが伝わってくる。

「あの…叶くん…?」

「俺のことわかる?ちゃんと誰だかわかってる?俺のこと忘れてない?」

見上げた叶くんの泣きそうな視線はじっとガーゼを見つめていて、背中に回されていた大きな手がそっとキャップごしに頭に触れた。

「傷痛む…?」

「大丈夫だけど…あの…えっと…叶くん…?」

もう一度名前を呼ぶと泣きそうな顔が笑顔になり

「うん、そう。叶だよ。俺のことわかってくれてるね。
忘れて…ないね」

そう言ってにっこり笑った叶くんにドキンとする。

うわっ…格好いい…。
間近でまじまじと見た叶くんは、服部くんとはまた違うタイプのイケメンだ。

今更ながらにこの状況に赤面して胸がドキドキしだす。

そんな私を背後から、叶くんの腕から私を引き離し、力強くぎゅうっと服部くんが抱きしめた。
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