彼女と私の見分けかた
背中に服部くんの体温を感じる。
叶くんの腕の中から私を引き離した服部くんは、背後からすっぽり私を自分の腕の中に包みこみ、抱きしめる腕に力を込めた。

「何してんの叶…」

頭の上で聞こえた服部くんの声は低音で、顔は見えないがたぶん…怒っている。

「こっちの藤咲は俺んだから。
菜月は俺の彼女だから。
いくら叶でも触れてほしくない!」

叶くんが私をじっと見つめること数秒。

「えっ…?あっ…!」

すぐに大きく目が見開かれ短く声を発して息を吐き出した。

「ふぅ…。ごめん、祥平。
菜月ちゃんも、驚かせてごめん。
ちょっと…勘違いして軽くパニくった…」


「大丈夫か…?
母ちゃん何かあったか?」

服部くんの言葉に、柔らかい笑みを浮かべていた叶くんが固まり、これ以上余計なことを言うなと言わんばかりに眉を潜めて服部くんを睨み付けた。
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