彼女と私の見分けかた
優しくて断ることができない叶にはいつも彼女がいた。
だけど叶は付き合う女の子が好きなわけではなく、付き合っても特別な感情をもつことができず、隣にいる女の子はすぐに別の女の子に変わっていた。
そんな叶にここしばらく彼女がいない。
コクられても断っている。
そんな叶を見るのははじめてだ。
最近菜月ちゃんのことで話すようになった藤咲。
藤咲と話していると決まって叶が不機嫌な顔で俺を見ている。
叶はもしかしたら藤咲のこと気になっているんじゃないのか?
そんなふうに考えていた俺は…自分の考えが間違っていたことに気づいた。
叶は藤咲ではなくて菜月ちゃんが気になっているのだと。
退院した菜月ちゃんに会いに行こうと思っていた。
部活がおわり、早く家に帰って着替えてから会いに行こうと思っていた。
だけど…。
部活仲間と駅に向かう中、急に叶が輪から抜けて走り出した。
その先に…会いたいと願う彼女がいた。
「菜月ちゃん…!」
弾かれたように俺も彼女に向かい走り出す。
だけど、菜月ちゃんは、俺より先に走り出した叶の腕の中にすっぽり収まり、目の前の光景に一瞬何が起きているのか訳がわからず頭の中が真っ白になり、直ぐに怒りがこみ上げてきた。