彼女と私の見分けかた
少し陽が落ち始めた静かな公園のベンチ。
肩が触れあう距離に腰をおろす。

傷にあてられたガーゼを隠すように、目深にかぶられているキャップに手を伸ばしてそれをとった。

彼女の顔がよく見えるようにと……キス…しやすいように。

キャップをとられて菜月ちゃんが慌てて手櫛で髪を整える。

そんな些細な仕草さえ堪らなく愛しい。

「可愛い」

思わず漏れた心の声に、菜月ちゃんはポン！と赤くなって

「そういう服部くんだって可愛いから！」

と可愛らしく口を尖らせ、手を伸ばして俺の手からキャップを取り返そうとしている姿がさらに俺の気持ちを煽っていく。
っていうか俺が可愛いってなんだよ？
衝動的に近づけた顔に

「しっ…しっ…」

とごにょごにょ口ごもる菜月ちゃんの小さな声が耳に入った。

「ん？なに？」

とさらに顔を近づけると、キッと俺を睨み付けた菜月ちゃんが、逆に俺の耳元に口をよせ

「服部くんの意地悪！
でも…。しっ祥平くん、好きっ」

と耳元で名前を囁かれてさらに好きなんて言ってくれちゃって、わかってんのかよっ！
この距離感で煽るなよな。
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