彼女と私の見分けかた
「お帰り菜月」

インターハイ敗退で帰宅した私を祥平くんが駅で出迎えてくれた。

電話で声は毎日聞いていたが、会うのは1週間ぶりだ。

あっ…日焼けしてる。
少し色黒の祥平くんもカッコいいなぁ。

「ただいま」

笑顔で答える私に、祥平くんはもう1度

「うん、お帰り」

と目を細めて笑い、伸びてきた手が私の手から荷物を奪う。

「持つよ。
インターハイお疲れ様。ようやく会えた。声だけじゃ物足んなくてさ。やっと…触れる」

私の空いた手を、すぐに祥平くんが指を絡めてぎゅっと握る。
同じように私も繋いだ手に力をこめる。

数日会えなかっただけなのに、少し日焼けした祥平くんにドキドキする。
私に向けてくれる優しい瞳と笑顔に今だになれなくて、さらりと口から出る甘い言葉に私の心臓も世話しなく反応しっぱなしだ。

「勝ち進めなくて残念だったけど、思ってたより早く帰ってきてくれたから明日の花火大会一緒に行けるな」

「うん。
練習もね、短いけど夏休みもらえたの!5日間だけどね。だから少しゆっくりできるんだ」

一緒に過ごしたくてチラリと見上げた祥平くんは、すぐにぱぁぁと瞳を輝かせ

「まじ!?休めるの!!
やった!遊ぼう!全部俺との時間!

あっ……。
なんか予定入ってる?」

うわぁ、その顔!
そんな捨て犬みたいな可愛い顔されたら何があっても祥平くん優先だよ。
意外とくるくる変わる表情に私はいつも目が離せない。
私をドキドキさせっぱなしの祥平くんに、少しだけ意地悪をする。

「うん、5日とも全部予定入ってる…」

「えーーっっ!!」

眉毛を下げてガックリ肩を落とした祥平くんの腕を引いて少し背伸びして耳元に口を寄せる。

「5日とも全部祥平くんで予約済み」

べっと舌をだしてクスリと笑うと、少しかがんだ祥平くんがさっと私の唇をかすめていく。

今度は彼がぺろりと舌を出して微笑んだ。

あぁ、ダメだ。
祥平くんにはかなわない。
今日もやっぱり私は甘い彼にやられている。

うん、好き。

大好きだよ、祥平くん。
昨日よりもさっきよりも、1秒前よりももっと好き。

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