彼女と私の見分けかた
朝練を早々に切り上げて、席についた俺はまるで落ち着きがない。

彼女はあくまでも藤咲美月として今日は登校してくる。

うっかり、へんに態度に出してしまったら俺と藤咲美月の噂がたってしまう。

どうしたらいいんだ…?

あれこれ悩んでいるうちに背後で叶の声が聞こえる。

「おはよう、藤咲」

ごくりと唾を飲みこみ緊張で顔がこわばる。

固まった体をどうにか動かし、振り返ろうとしたときはっきりと間近で彼女の声が聞こえた。

「おはよう、叶くん」

当たり前だけど声まで一緒なんだな…。

いいなぁ、叶の奴、名前で呼ばれて。

でも、本当にここにいるのは彼女なのか?

「おはよう、祥平」

自分にかけられた叶の声に、ゆっくり振り返り、視界にとらえたのは叶ではなく、ずっとこの瞬間を待ち望んでいた彼女を俺は真っ直ぐに見つめた。

「……」

うん、間違いない、確かに今ここにいるのはなっちゃんだ。

俺の顔が微かに綻ぶ。

彼女が俺に向けた笑顔を見たら、彼女がここへきた理由なんてどうでもよくなって、俺は今日一日、彼女と一緒に過ごせる日常を楽しもうと思った。
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