彼女と私の見分けかた
目立つてはいけない。

同じ電車のイケメンくん服部くんが、美月のクラスメートで美月の想い人だとわかった時、この車両に乗るべきじゃない、乗るのをやめようと何度も思った。

だけど小さなカレを理由に私は今だに乗り続ける。

二駅だけ服部くんをみつめたくて。
見るだけでいい。
私の存在には気づいてもらわなくていい。そう思っていたはずなのに、彼は私が小さなカレを守っていることを知っていてくれた。

だからなおのこと美月と同じ容姿なことを知られたくなかった。

野暮ったい黒縁眼鏡の菜月を高校卒業まで押し通すのだ。

密かに想うことくらいは自由なのだ。

それだけでいい。
話すことも目が合うことも望みはしない。

毎朝会えればそれだけで私は満足だ。

7時発東京行き。

3両目に乗ると背の高い服部くんをすぐに見つけて私の顔が微かに綻ぶ。

二駅だけの幸せな時間。

服部くんの横顔を眺めながら、今日も私は満員電車に揺られていた。
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