彼女と私の見分けかた
そわそわドキドキしながら、待ち合わせ場所で好きな人を待ってみたくて、30分も早くきたはずなのに、彼は…いた。

私を見つけて驚いた顔をして

「…30分前…。気が合うね」と目を細めて笑う彼にドキドキしながら私の顔も綻んだ。

「えっと…今日は来てくれてありがとう」
照れ笑いしながら前髪をくしゃりとつかむ姿に私の心臓はさらにドキドキする。

あっ…この仕草…好き。

たぶん、服部くんが緊張しているときの癖なんだろう。
私を上から下まで見ると、最後にじっと数秒顔を見て、すぐにぱっと目を反らしたその頬はうっすら赤く染まっていた。

「ごめんっ…可愛いくて…直視できない…」

美月を見慣れているはずなのに、服部くんの言葉と態度に嬉しくて涙がでそうだ。

ちゃんと、この人は美月と私を区別して、私を菜月を好いてくれている。
ずっとひっかかっていた美月の存在に、不安だった気持ちが、少しずつ服部くんによって溶かされていく。

「…バスケの試合、見に行かない?」

「えっ?」

「あっ…んっと…ショッピングモールの前にスポーツ施設が去年できたよね。
そこで今日やるBリーグのチケットもってて。

男子のプロバスケットボールの試合…興味ない…かな…」

黙りこんでしまった私に、服部くんは困った顔をして

「ごめん、やっぱり映画、映画見に行こう!」

と携帯に視線をうつして映画を調べ始めた。
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