約束の拳
ナオが動くのをやめる。息は乱れ、汗まみれだが、強い者の証だとヒロトは思った。みんなが休んでいる中、懸命に練習してきた。その努力は誰も敵わない。

「お前、ほんとすげえよ」

ヒロトの言葉に、ナオは「えっ?」と首を傾げる。ヒロトは背負っていたリュックサックを開けて水の入ったペットボトルをナオに投げる。ナオはそれを素早くキャッチした。

「俺たちがくだらない話してポテチ食ってる間、ずっと練習してんじゃん!それって俺だったら絶対無理!誘惑に負ける!」

キョトンとして顔だったナオは、アハハと声を上げて笑った。ナオは人より練習熱心だが人間関係を壊したりはしない。強くなろうが、こうして笑ってくれる。

「俺、努力すること以外何もできないし。だったら、できることを全力でした方がいいだろ?強くなって、誰かを守っていきたいんだ」

ナオは力強く目で景色を見渡す。ヒロトも同じように景色を見た。夕暮れの街は、どこか幻想的だ。ポツポツと暗くなり始めた街に明かりが灯っていく。
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