失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜



いざ、お風呂に入るよって言って脱衣所まで彼を引っ張ってきたのに
その後どう動いていいのかわからない中途半端なあたし。

引っ張ってこられてきた彼はすぐ傍に置いてあったバスタオルを手にとってあたしの肩をそれでそっと覆ってくれた。


「これで隠せば、恥ずかしくないですよね?」

『へっ?』

「風邪ひいちゃいけないから、一緒に入るんですよね?」

『はい?』


彼からの一緒に入るんですよね?に驚いたあたし。

この男
さっきからジェントルマンすぎる

こういう時、今まであたしが付き合っていた男なら
ここぞとばかりに、あたしが着ている服を剥ぎ取りながらお風呂に体を無理矢理沈めるのに


ただジェントルマンでもひとつ残念なことがある

『服、脱がなきゃお風呂、入れないって。』

「そうですけど。」


それは男の本能が1ミリも感じられないコト


このホテル

入口に部屋選択ボタンあり
部屋の中にはクイーンサイズぐらいの大きなベッドとヘッドボードにはコンドーム。
ベッド周囲は鏡で囲われていて、冷蔵庫の横にはラブグッズの自動販売機まであり。

おそらくラブホテルと言ってもいいところ


ここの浴室で、
衣服がズブ濡れのふたり、しかも、
あたしに上半身を裸にされちゃった状況で

本能で動こうとしないなんて

『あたしの服、脱がせて!』

「・・・はい?」

『今日、あたし、キミを拾ったの・・・だから、今からキミはあたしに絶対服従!』


なんだか悔しいの


< 11 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop