失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
『キャッ!』
足に纏わりつくジャグジーから放たれた泡のせいで滑りそうになったあたし。
そんなあたしを広い胸で抱き留めてくれた彼。
その拍子に胸に巻き付けてきたバスタオルがひらりと舞い落ちて。
身に纏っていた唯一のものもなくなってしまったあたしはすでに同じ格好である彼に強くしがみつく。
恥ずかしすぎて息を堪えたあたし。
このままのぼせるかもしれないと思った瞬間、
「ちゃんと息して・・・動かないで下さいね。」
そう言いながら彼はあたしをお姫様抱っこしながら、そっとジャグジーの中に体を沈めてくれた。
その後もなぜかジャグジーの中でもお姫様抱っこ状態のあたしたち。
しかも、あたしの様子を真剣にじっと窺う彼。
『・・・さすがに恥ずかしい。』
「のぼせそうな感じでしたけど、大丈夫そうですね。」
『心配してくれたの?』
「・・・・一応。でも回れ右したほうがよさそうですね。」
『なんで?』
「俺も、一応、男なんで。」
ちょっと仲のいい姉弟は一緒にお風呂に入るものみたいな、家族みたいな雰囲気が
回れ右した彼の言動によって
心臓の動きがぐるぐる変な音を立ててしまう危ない空気に様変わりした。