失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
両手で彼の頬をそっと包んだ。
ゆっくりと目を閉じた彼。
頬に触れている手を介して伝わってくる少しひんやりとした彼の体温。
少しでも温めてあげようと頬にキスをする。
そのタイミングで彼の閉じたままの上瞼がかすかに動く。
彼のその動きで、自分が落としたキスでが反応しているように思えて胸がぎりりと揺れ、もっともっとキスしたいという想いがむくむくと湧き上がる。
浴室の湿気でうっすらと湿気を含んだ少し長めの前髪。
奥二重の目尻。
かすかに脈を打つこめかみ。
少し厚みのある耳たぶ。
キレイに髭が剃られた顎の横ライン。
そして
くっきりとした鼻筋の先にある鼻の頭。
それらひとつひとつに
ゆっくりと、そっと、キスを落とす。
水気によって、彼の触れた部分にすっと吸い付けられる感覚を纏う唇
ひとつひとつを素直に受け止めてくれる彼に
受け入れられているという想いに満たされ
喉の奥がぎゅっとしまる。
もっと彼を感じてみたいと
背筋がぞわりとしたあたしは
彼の薄めで桜色の唇に自分の唇を寄せた。
その瞬間感じた。
うっかりと近づけてしまった同じ極どうしの磁石が反発しあうような空気。
このまま唇を重ね合ってはダメだという空気。
それらを。