失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
『なんでここにいるの?』
密かにズブ濡れ青二才サイテーサイコー男が戻ってきてくれたらよかったのにと
思ってしまったあたしが目の前にいた予想外の男を遠慮なく問い質す。
「だから、その・・・」
『まさかの鉢合わせ?!・・・お互い、いい歳してお盛ん・・・』
いつもは調子のいい藤崎なのにバツが悪そうな顔をのぞかせていることに
こっちまで調子が狂う。
「バカっ・・そんなんじゃない」
『はっ?』
しかも、いつもは決してみかけない険しい顔。
「お前、中原課長のことがあっても・・・男に声かけて、行きずりでこんなとこに来るなんて・・・」
なんであたしが藤崎に怒られなきゃいけないんだ?
確かに藤崎とは入社以来、
何かとじゃれあう悪友みたいな関係だけど
プライベートまでつべこべ言われる筋合いはないはず
『いいじゃない・・・寂しかったんだもん。イケメンだったし。』
寂しかったという正当な言い訳をして幕引きを試みたのに。
「バカっ。しかもひとりで置き去りにされやがって・・・」
『あんたもそうじゃん。相手はどこ行ったのよ?』
さっきから気配のない藤崎のお相手を探そうと
部屋のドアの外を覗きこもうとしたのに
「いないよ。相手なんて。」
ラブホテルにひとりで入って来たなんて
藤崎は意味不明なことを言い始めた。