失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
「氷室さん、もう仕事、終わったの?」
『終わった。たった今。』
「決算前でハンパなく忙しいのに?」
可愛さアピールするような高い声の同僚の島田の矛先が中原課長からあたしに向く。
『あたしを誰だと思ってるのよ。』
「365日定時退勤の氷室澪さん。27才独身♪」
『最後の情報、不要。じゃあね。』
妻と別れるから待っていてくれなんて
ダメ男の常套句だってわかっているのに
信じたかった
中原課長のコト
別れるからって言っていたのに
奥さんが妊娠しているなんて知らなかった
妊娠している最中にあたしとヤッてるなんて
サイテー男だ
でもあたしも悪い
別れるからなんてどこにも確証なんかなかったのに
不倫ってわかっていて抱かれていた
あたしもサイテー女だ