失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
なぜか昨晩とは異なるラブホテルの部屋で
会社に出勤できる服を纏ったままベッドにひとりで座っているあたし。
『昨日と同じ服だ・・・しかもまだ少し濡れてるけど・・・』
スカートの裾にひんやりとした昨日の余韻が残っているのを自覚したあたし。
昨日会社を退社する時にはこんなことになるなんて
誰が想像しただろう
昨日の夜
あたしよりも不幸せそうだったズブ濡れサイテーサイコー青二才男を拾って、逆に慰められて
今朝
同僚の悪友である藤崎にここに連れこまれて
挙句の果てにスキだなんて言ってしまって
『この男も、昨日と同じ服だよね?』
そんな目まぐるしさに正直あたしも驚いている
あたしのこれからに
藤崎がいるかもしれないなんて
そんなことにも驚いている
「氷室?・・・」
『・・・・・・』
「澪。今なら出社時刻に間に合うぞ。」
濡れた髪のまま、窮屈そうにネクタイを結びながら浴室を出てあたしのほうに来る彼。
その彼の澪呼びにくすぐったさを覚える
昨日の男のレイ呼びの切なさとは異なる、愛しいくすぐったさを
『清い関係・・・いいね。続けよう、それ。』
「はっ、続ける?」
『いいじゃん。愛を感じるわ。』
「そうだけど、いや、そうだけどな。でも、欲しいんだよ。わかるか?」
『わかんない。さ、出勤しよ。』
「あ~、抱きたい、抱く、エッチしたい。絶対エッチする。澪が白旗挙げるまで。しつこく、がっつり、天国に昇るぐらいまで。やる。やる。やるぞ、俺は」
『だから出勤時刻だって。』
清い関係を誓ったはずなのにあっさりと寝返ったこのヘタレな男を
『清い関係、サイコー!!!!』
気分よくホテルの外に堂々と引っ張り出して、
昨日の雨の夜から一変して気持ちいい快晴の下で一緒に昨日と同じ服で出勤した。