失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
同僚の島田が中原課長のもとに、出産祝いなにがいいですか?と野次馬根性丸出しで彼のところに戻ったタイミングであたしは退勤打刻ボタンをクリックし、彼らがいる部屋から退出した。
ハッピーな雑音から逃げるように。
『雨、酷くなってきたよ~。ヒールの中まで濡れてきた・・・サイアク~』
傘を差しながら地下鉄に向かう。
水たまりをよけたつもりなのに、足首にひんやりとする感触。
今年は暖冬で雪じゃなくて雨が降ってる。
雪だったらよかったのに。
そうしたらこんなにブルーな気持ちが少しは紛れたのかもしれないのに。
そう思いながら歩いていたあたしの視界に
『ありゃ~、あたしよりもヤバそうな人がいるわ。』
どしゃぶりの中、ずぶ濡れになりながら名古屋駅のツインタワーを見上げる背の高い男が立っていた。