失った恋と捜し続ける恋、背中合わせの夜
アイボリーカラーのパーカー黒色のダウンジャケット。
長年履きこなしていそうな品のいいジーンズ。
前髪が少し目にかかっているけど、短めな黒髪が雨で完全ウエット状態。
よくよく見るとあたしよりも年下な雰囲気。
おそらく学生。
日が暮れた今、こんな状態で立っている彼。
なにかワケありな空気が漂う。
いつものあたしなら、そんな人、スルーしてこの場を立ち去る
でも
『風邪、ひくわよ。』
この時はほっておけなかった。
途方に暮れている彼が何か過ちを犯してしまいそうで。
不幸の真っただ中であるあたしは
自分よりももっと不幸という言葉が似合っていそうな彼に
少し背伸びをして傘を差しだした。