世の中、甘くはないのですよ?
大河はそう言い、またキスを再開する。今度は最初から激しい。またとろけてしまう。

大河は、出会った頃は優しい好青年という印象だった。でも付き合ってみると、独占欲の強いドSだ。

キスを何度もして、大河は満足したみたい。私を解放してくれた。私は変わらず荒い息をして必死に呼吸を整えているけど、大河は涼しい顔をして執事の顔に戻っている。大河はキスが上手。息を荒げることはない。

「お嬢様、お茶が冷めますよ?」

意地悪な顔に一瞬戻り、大河が言う。私は真っ赤な顔をしながらティーカップに残った紅茶に口をつけた。もうすでにティーカップの中の紅茶は冷め切っていたけど、火照った体にはちょうどいい。

「お代わり、入れますね」

カップの中が空になると、大河は素早く紅茶を入れてくれた。執事の時は本当に優しい気の利く人なんだけど……。
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