訳あり冷徹社長はただの優男でした
プロローグ
休日の朝早く。
インターホンが鳴って、見知った顔だからと渋々ではあったけど出てしまったのが運の尽きだった。

「愛と金、選ぶならどっちを選ぶ? 私はさ、お金だと思ってたわけ。世の中お金さえあれば苦労せずにすむじゃない? でもね、私は気づいちゃったわけ。お金だけあったって全く心は満たされない。やっぱり愛がなくちゃだめなんだって」

「……はあ」

玄関先で持論を展開するドヤ顔の姉に、私は適当に相槌をうつ。何をしに来たのかまったくわからないし、そんなことを言うだけのために朝っぱらから我が家を訪ねてきたのならお門違いもいいとこだ。

「私たちって父親に捨てられて相当お金に苦労してきたじゃない。だからさ、私は余計にお金に執着していたわけよ。そのせいで母親も亡くなったしさ、今までは父親むかつくって思っていたの」

「……はあ」

「でもね、今なら父親の気持ちがわかるなぁって。世の中お金じゃない。愛だよってね!」

両手を胸の前で組んでうっとりとする姉に、私はいよいよ呆れた疑問を呈す。

「はあ?」

相当冷たい声音だったと思う。
けれど姉はまったく動じない。
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