訳あり冷徹社長はただの優男でした
私は黙々と残りのご飯をかけ込むと、食器をシンクへ持っていった。すぐに柴原さんも食べ終えて食器を持ってくる。

「どっちやる?」

「どっちでも。」

「じゃあ今日は俺が洗うね。」

柴原さんは腕まくりをすると、シンクにたまっている洗い物を始めた。
家事も自発的にやってくれる。
姉の旦那さんはできた人だ。

柴原さんが洗った食器を私が拭く。
食洗機もあるけど、少しの食器だから手で洗った方が早いのだ。二人でやればあっという間だし。それに、こうして二人で並んで作業するっていうのも、悪くない。

「手拭く?」

洗い終えた柴原さんに布巾を差し出すと、ありがとうと、布巾ごと手を掴まれた。
なんだろうと思って首を傾げると同時に、おでこに柔らかな感覚が走る。

き、キスー!

とたんに真っ赤になった顔で口をパクパクさせる私に、柴原さんは意地悪く笑った。

「俺を煽った罰だよ。本当は口にしたかったけどね。」

と私の唇を指でなぞる。
艶っぽい甘い声に私の思考は完全に停止した。

もう、心臓が口から出そうだよ。
私をドキドキさせてどうするつもりだよ。
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