訳あり冷徹社長はただの優男でした
いつも通りお迎えに行くと、今日は泣かずに笑顔で寄ってきた。
すずも園に大分慣れたらしい。

「ねえね、だっこだっこー。」

「はいはい。」

最近抱っこの欲求が多くなってきた。保育士さん曰く、そういう時期もありますよとのことだ。
11キロのすずを抱っこして歩くのはさすがにしんどい。かといって歩かせるとどこかへ行ってしまうし歩みも遅いので、抱っこが一番効率的なのかもしれない。

「すず、重いよー。」

「きゃはは!」

何が楽しいのか、すずはご機嫌だ。
だけど私の腕はプルプルしている。

近所のスーパーに寄ると、お米が特売だった。
そうか、すずは米一袋と同じくらいの重さだったか。そりゃ腕もプルプルするわ。

子どもを乗せることができるカートにすずを乗せて、軽く買い物をした。いろいろ買いたいものはあったけど、たくさん買うと持ちきれないから我慢する。ただでさえ抱っこ魔のすずがいるんだから、限界はすぐそこに見えている。

カートは便利だ。
すずを抱っこしなくていいのだから。

「あ、そっか、ベビーカーがあるといいのかも。」

「いいのかもー?」

私の呟きに、すずが無邪気に笑った。
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