訳あり冷徹社長はただの優男でした
「課長、すみませんが少しお話があります。」

席を立っていた課長は私に気付くともう一度座り直し、しっかりと向き合ってくれた。
緊張で変な汗が出てくる。

「実は今姪っ子を預かっていて面倒を見ているんですけど、その子がお熱で保育園から呼び出しがあったんです。早退してもいいでしょうか。」

恐る恐る聞いたのに、課長の答えはあっさりしたものだった。

「大変だね、早くお迎えに行ってあげないと。」

「え、いいんですか?」

あまりにもあっさりしていて拍子抜けしてしまう。逆に課長は疑問を投げかけてきた。

「仕事より子供の方が大事じゃない?仕事なら皆でフォローするから気にしないでいい。」

「ありがとうございます。」

あまりにも理解がありすぎて鼻の奥がつんとしてくる。こんなにあっさりと早退が許されるなんて思ってもみなかった。

さすが、三人の子持ちは違う。この人が上司でよかった。それに武藤さんも。子育てをしている人が近くにいてしかも理解がある。
今までまったく気付かなかったけど、なんて恵まれた職場なんだろうか。
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