訳あり冷徹社長はただの優男でした
すずの風邪は治ってよかったが、お風呂上がりに鏡で自分の顔を見て、私はげんなりした。
私まだ二十代前半なのに、めちゃくちゃ老けた顔をしている。
こんなことでこの先大丈夫だろうか。

休み明け、仕事に行くと未読メールでいっぱいになっていた。加えてデスクの上には書類の山。快く休ませては貰えたけれど、仕事まではやっておいてくれないらしい。まあそれが当然ではあるけれど、妙に残念な気分になってしまうのは贅沢な悩みだろうか。

「橋本さん、お子さん大丈夫?」

「はい、おかげさまで。ご迷惑をおかけしました。」

「フルタイムで大変でしょう?私みたいに育児勤務は使わないの?」

武藤さんの質問に、私は首を横に振る。

「姪っ子なので育児勤務はできないんじゃないですかね?」

「えー?そうなのかなぁ?」

そりゃ使えるものなら使いたい。
だけど私の子ではないのにその制度は使えないんじゃないだろうか?それにもし育児勤務が使えたとしても、時短にする分お給料も減ってしまう。大手に勤めているとはいえ、入社二年目でまだ安月給な私の給料が更に少なくなると、今度は生活に困るのではないだろうか。

気を抜くとため息が出てしまいそうになる。
< 29 / 112 >

この作品をシェア

pagetop