訳あり冷徹社長はただの優男でした
私の黙りに気をつかってか、柴原さんが補足する。

「もちろんプライベートなことは踏み込まない。あくまでもすずのため。すずが一番いい環境で過ごせるのがベストだと思うんだ。」

「それは、そうですね。」

確かにそう。
すずが一番いい環境で。
それが一番だ。

「それに、俺はちゃんとすずの父親になりたいと思う。」

柴原さんは未だモグモグと食に走っているすずに視線を送ると、優しく微笑んだ。
その顔は社長じゃなくて、もう立派なパパの顔だった。

だから私も覚悟を決めた。

「私たち上手くいくかな?」

「上手くやるしかないだろう?」

迷っている時間はあまりない。
”すずのため”という魔法の言葉に、すべてを受け入れるしかないのだ。

私たちはすずのために、一緒に住むことを決めた。
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