訳あり冷徹社長はただの優男でした
保育園では、エプロンの置場やタオルの置場、お昼寝布団の置場など、諸々教え込んだ。
最後にすずのお熱を計ってそれを連絡帳に書く。

「ああ、ここでもやることがたくさんなんだ。」

柴原さんは感心するように言った。
やることがたくさんでも覚えてしまえば早いものだ。

だけど問題はすずだ。

毎回お利口にお熱を計らせてくれる訳ではない。嫌だと逃げたり、お友達と走り出したり、とにかく二歳児は落ち着きがない。出勤時間が迫る忙しい朝、そんなことはお構いもなく無双する子供達に、世の中のパパ、ママは上手に我が子を誘導して朝の支度をこなしている。本当にすごい。私はそれを見よう見まねで何とか頑張ってきた。

「あら、すずちゃん、今日はパパとママと一緒なのね。よかったわねぇ。」

保育士が私たちを見て軽やかにすずに話しかけた。すずはにこーっと満面のドヤ顔だ。

パパはパパだけど、私はママじゃないんだよねなんて苦笑してしまう。でもいちいち訂正するのも野暮ったい。

柴原さんは動じずニコニコとしていた。
さすが社長は違うな。
余裕の微笑みだ。
< 50 / 112 >

この作品をシェア

pagetop