訳あり冷徹社長はただの優男でした
私たちのやりとりを見ていたすずが、楽しそうに横やりを入れる。

「パパ、ケンカだめだねぇ。」

「ケンカじゃないよ。」

柴原さんが苦笑する。

「はちもとちゃん?」

すずが私を指差して言うので、柴原さんは慌てて訂正した。

「違う違う。橋本さん、じゃなくて。」

「はちもとちゃーん。あははは!」

何がすずのツボに入ったのか、すずは“はちもとちゃん”を連呼してはその度にゲラゲラと笑った。頑張って訂正を試みた柴原さんだったが、まったく聞く耳持たないすずの対応にガックリしたのか、そのうち眉間を押さえて天を仰いだ。

子供はすぐに回りの人の言葉を繰り返す。
せっかく“ねえね”と可愛く呼んでくれているのに、“はちもとちゃん”になってしまっては困る。

私は大きくため息をついた。
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