訳あり冷徹社長はただの優男でした
とりあえず急いで着替えて心を落ち着かせてからリビングへ赴いた。
気まずい雰囲気に言葉も出ない。

「パパにきせてくれたー。」

「うん、着せてもらったのね、よかったね。」

「きせてもらったー。」

すずは得意気な顔でパジャマを自慢しながら、私の回りをくるくると回った。思えば柴原さんもすずを着替えさせることが上手くなった。最初はおむつやズボンの前後も分からずにわたわたしていたのに。

「美咲、ちょっと。」

突然柴原さんが、私が首に掛けているタオルを取り外し、広げて頭に被せた。そしてそのままわしゃわしゃとする。
タオルごしに伝わる柴原さんの大きな手と優しい動きに、おさまっていた心臓がまたドキドキと早くなった。

「あ、あの。」

「いつもこんな感じ?」

「え?あー、まあ。」

そういえば素っぴんパジャマにタオルを首から掛けて、可愛さの欠片も見えない私。いつもはすずと布団に入った頃か、すずが寝てから帰ってくる柴原さんだったから、こんな姿をさらすのは初めてだ。

今更ながら恥ずかしくなってきた。
私はタオルの下で顔が熱くなるのを感じた。
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